健康かわら版 8月号 「逆流性食道炎」について

 皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
逆流性食道炎という病気は、強い酸性の胃液や胃で消化される途中の食物が食道に逆流して、そこにとどまるために、食道が炎症を起こし、胸やけや胸の強い痛みなどさまざまな症状が生じる病気です。逆流性食道炎は、もともと日本人には少ない病気でしたが、食生活の変化などによって、最近は患者さんが増加しています。

逆流性食道炎の原因

逆流性食道炎の原因となる胃液や胃の内容物の逆流は、食事の内容、肥満、加齢、姿勢などによって下部食道括約筋等の食道を逆流から守る仕組みが弱まったり、胃酸が増えすぎることで起こります。

■脂肪の多い食事、食べ過ぎ
脂肪分のとりすぎや食べ過ぎによって、何も食べていない時に下部食道括約筋がゆるみ、胃液が食道に逆流してしまうことがあります。脂肪の多い食事をとった時に十二指腸から分泌されるコレシストキニンというホルモンの働きや、たくさんの食事で胃が引き伸ばされることで、下部食道括約筋がゆるむと考えられています。脂肪の多い食事は、胃酸を増やすことによっても胃液の逆流を起こしやすくします。

■タンパク質の多い食事
タンパク質の多い食事は消化に時間がかかり、胃に長くとどまるため、胃液の逆流が起こりやすくなります。

■肥満
日本人では、肥満と逆流性食道炎の関係を示すデータがないので、はっきりしませんが、肥満の人は、逆流性食道炎の原因のひとつである食道裂孔ヘルニアになりやすいことが分かっています。また、腹圧が上がることで、逆流しやすくなるともいわれています。

■加齢
年をとると、下部食道括約筋の働きが悪くなります。また、食道のぜん動運動、唾液の量なども少なくなるため、逆流した胃液を胃に戻すことができなくなります。


逆流性食道炎の症状

逆流性食道炎では胸やけのほかに、呑酸(どんさん:酸っぱい液体が口まで上がってくること)、胸痛、咳、のどの違和感、不眠などさまざまな症状がみられます。しかし、なかには食道に炎症が起こっていても、あまり症状を感じない方もいます。

逆流性食道炎をチェックしてみよう ●合計点8点以上は逆流性食道炎の可能性が高い

問1.胸やけがしますか?
・ない(0点) ・まれに(0点) ・しばしば(3点) ・いつも(4点)
問2.お腹がはることがありますか?
・ない(0点) ・まれに(0点) ・しばしば(3点) ・いつも(4点)
問3.食事をした後に胃が重苦しい(もたれる)ことがありますか?
・ない(0点) ・まれに(0点) ・しばしば(3点) ・いつも(4点)
問4.思わず手のひらで胸をこすってしまうことがありますか?
・ない(0点) ・まれに(0点) ・しばしば(3点) ・いつも(4点)
問5.食べたあと気持ちが悪くなることがありますか?
・ない(0点) ・まれに(0点) ・しばしば(3点) ・いつも(4点)
問6.食後に胸やけがおこりますか?
・ない(0点) ・まれに(0点) ・しばしば(3点) ・いつも(4点)
問7.喉(のど)の違和感(ヒリヒリなど)がありますか?
・ない(0点) ・まれに(0点) ・しばしば(3点) ・いつも(4点)
問8.食事の途中で満腹になってしまいますか?
・ない(0点) ・まれに(0点) ・しばしば(3点) ・いつも(4点)
問9.ものを飲み込むと、つかえることがありますか?
・ない(0点) ・まれに(0点) ・しばしば(3点) ・いつも(4点)
問10.苦い水(胃酸)が上がってくることがありますか?
・ない(0点) ・まれに(0点) ・しばしば(3点) ・いつも(4点)
問11.ゲップがよくでますか?
・ない(0点) ・まれに(0点) ・しばしば(3点) ・いつも(4点)
問12.前かがみをすると胸やけがしますか?
・ない(0点) ・まれに(0点) ・しばしば(3点) ・いつも(4点)


治療の必要性

胸やけなどの症状は不快なものですし、前記のような症状の他、以外な症状が逆流性食道炎によって起きていることもあります。現在、逆流性食道炎に非常に効果的な薬があり、ほとんどの方は、こうした薬で症状をなくすことができます。ただ、症状がなくなったからと自分の判断で治療をやめてしまうと、再発を繰り返すことが少なくありません。不快な症状から解放され、再発しないようにするために、医師の指示を守って治療していきましょう。
また逆流性食道炎を治療することは、食道の粘膜が胃の粘膜に変性するバレット食道、食道がんなどの合併症の予防につながると考えられています。たとえはっきりとした症状を感じていなくても、逆流性食道炎の治療に取り組むことは大切なことです。また、胸やけは逆流性食道炎以外の病気でも起こることがあります。きちんと検査を受けて、他の病気がないか、確認することが大切です。

逆流性食道炎の治療薬
・酸分泌抑制剤  
 (プロトンポンプ阻害剤 H2受容体拮抗薬)   
  胃酸過多の状態を改善
・消化管運動亢進薬   
  食道に逆流した胃酸を胃にもどす効果
・制酸剤
  食道に逆流した胃酸を中和する

日常生活の注意点

食生活を改善しましょう
■胃液の逆流を起こしやすい食べ物を減らす
脂肪分やタンパク質の多い食事をとりすぎないようにすることが大切です。他に、胃酸を増やしたり胸やけの症状を悪化させるチョコレートなどの甘いもの、唐辛子・コショウなどの香辛料、みかんやレモンなどの酸味の強い果物、消化の悪い食べ物などはとる量を減らしましょう。

■一度に食べ過ぎないようにしましょう
一度にとる食事の量を減らし、腹八分目を心がけましょう。

■アルコール、コーヒー、緑茶を減らしましょう
アルコールは、胃酸の分泌を増やすと同時に、食道下部括約筋をゆるめることが分かっています。アルコールはできるだけ控えましょう。またコーヒーや緑茶などに含まれるカフェインも、胃酸の分泌を増やします。

■肥満を解消しましょう
食生活の改善とともに、適度な運動を行い、肥満を解消しましょう。

■姿勢に注意しましょう
姿勢と逆流性食道炎は深く関係しています。日中は前かがみの姿勢を避けましょう。
寝る時は、少し上半身を高くして寝ると、逆流が起こりにくくなります。食後3時間くらいは、胃の内容物の逆流が起こりやすいといわれています。食後すぐに横になったり、寝る前に食事をとることは避けましょう。

■おなかを締めつけないようにしましょう
ベルト、コルセット、ガードル、着物の帯など、おなかを締めつけるものは、身につけないようにしましょう。

■禁煙しましょう
タバコは逆流性食道炎を悪くします。禁煙に取り組みましょう。

逆流性食道炎と食生活  
 胸やけを起こしやすい食品
 ・脂肪 油もの・揚げ物(てんぷら、とんかつなど)
 ・炭水化物 パン、イモ類
 ・高浸透圧食 甘いもの(ケーキ、あんこなど)
 ・酸性食品 酢の物、柑橘類、梅干
 ・その他 アルコール、コーヒー、炭酸飲料、たばこ


〔出典〕日本消化器学会ホームページ、アステラス製薬ホームページ、たばこと健康に関する情報ページ



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