健康かわら版 1月号 「いびき〜睡眠時無呼吸症候群」について

 皆さま、明けましておめでとうございます。
年末年始は一年のうちでも、飲酒機会が最も多い時期ではないでしょうか。楽しくお酒を飲んだ後、大きな「いびき」をかいているなどと、ご家族などに指摘されたことはありませんか?お酒を飲まなくても寝ている姿勢によって、または常にいびきをかいている方も多いことと思います。
 今月は気になる「いびき」とそれに関連する「睡眠時無呼吸症候群」についてお話します。いびきの原因を探ることで、睡眠の質がよくなったり、恐ろしい病気になることを防ぐ一歩になるかもしれません。

いびきはなぜ起こるの?

いびきは「睡眠時に起こる異常な呼吸音」とされ、睡眠中の呼吸に伴い喉周辺の粘膜が振動することで生じます。原因や震える部位は様々です。主な原因としては、風邪や鼻炎などで鼻が詰まり、口呼吸になることや、扁桃腺の肥大や肥満などで上気道が狭められることによります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは
睡眠中の1時間当たりに「無呼吸」や「低呼吸」が5回以上あり、それが原因で熟睡が妨げられ、日中に抵抗しがたい異常な眠気に襲われる状態を「睡眠時無呼吸症候群」といいます。
「無呼吸」とは・・・睡眠中に呼吸が10秒以上停止する状態
「低呼吸」とは・・・睡眠中の呼吸で換気量が50%低下している状態が10秒以上続くこと。

睡眠時無呼吸症候群の弊害

睡眠中に無呼吸になった場合、酸素の欠乏を感知して、脳が、呼吸を再開させるために覚醒します。無呼吸の回数が多くなると、酸欠と脳の覚醒を繰り返すことになり、深く眠ることが出来ません。睡眠に充てる時間は十分でも、実際は寝不足な状態です。そのため朝からだるさを感じたり、集中力が低下したり、日中に抵抗しがたい眠気を催したりします。睡眠時無呼吸症候群の場合は、運転中や大事な場面でも突然眠ってしまうことがあります。また、酸欠状態が頻繁に起こることで「呼吸不全」と同様の状態になります。そのため酸素を運ぶ循環器系への影響が大きく合併症として高血圧や心筋梗塞、不整脈、脳梗塞の発症リスクが高まります。糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病との関係も大きいといわれています。

ご家族などにいびきや無呼吸を指摘されたことのある方は、耳鼻咽喉科や呼吸器内科、睡眠外来のある心療内科などを一度受診することをお勧めします。問診・診察を行い、必要に応じて自宅で行える簡易検査(睡眠中の呼吸をチェックできる機器を使用)や、一泊入院で睡眠の状態をみる精密検査(終夜睡眠ポリグラフ・PSG)を行います。終夜睡眠ポリグラフは頭部や身体に電極をつけた状態で一晩限り、脳波や呼吸・筋肉の状態を調べます。医療機関を受診する際には、専門医がいるか、検査が出来るかなどを、あらかじめお問い合わせください。


【Epworthの眠気テスト(ESS:The Epworth Sleepiness Scale)】

昼間の眠気を自己評価してみましょう。該当する項目の数字をチェックして、合計点を出します。
全く眠くならない…0  まれに眠くなる…1  時々眠くなる…2  眠くなることが多い…3

状況 点数 0 1 2 3
座って読書をしている時
テレビを見ている時
公の場所(会議、劇場など)で黙って座っている時
他の人が運転する車に、1時間続けて乗っている時
状況が許せば、午後横になって休息した時
座って誰かと話をしている時
(お酒なしの)昼食のあと、静かに座っている時
車の運転中に交通渋滞等で数分間止まっている時
合計点数
合計点が11点以上の場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。10点以下でも家族から睡眠中の大きないびきや呼吸停止などを指摘された場合や、日中に強い眠気がある方は要注意です。


睡眠時無呼吸症候群の治療について

精密検査などで睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、無呼吸の程度や、その方の身体の状態(いびきの原因箇所、肥満など)に応じた治療が行われます。主な治療をご紹介します。

【マウスピース(スリープスプリント)】
寝る前に装着し、睡眠中に下顎が少し前に出るようにします。それにより気道が開き空気の通りが良くなるため、いびきや無呼吸が治まります。身体への負担が少なく、旅行先などにも携帯できます。但し歯や口腔内にトラブルがある方は使えない場合があります。作成は歯科で行います。

【CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸)療法】
睡眠中に鼻にマスクを装着し、適切な圧力の空気を気道に送り、気道が塞がるのを防ぐ機械です。舌の落ち込みによる気道の閉塞も防げます。酸欠にならず熟睡できるため、使用した翌日から効果が感じられます。また体内の酸素量も増えるため、無呼吸による循環器系の合併症を予防する効果もあります。機械自体はポータブルなサイズですが、ホースやマスクなどの付属品があり、また電源が必要であるなど、やや不便な面もあります。また保険適応で使用するためには、診断や検査結果などに条件があります。

【外科手術】
睡眠中の無呼吸の原因となる部位が明らかな場合は、手術も検討されます。小児の睡眠時無呼吸で、扁桃腺の肥大などが原因の場合は手術が選択されます。最も一般的な手術は口蓋垂軟口蓋(コウガイスイナンコウガイ)咽頭形成術です。これは口蓋垂・口蓋扁桃・軟口蓋の一部を切除し、気道を広げる手術です。レーザーなどを使って切除することもあります。手術に伴い、痛みや生活に不自由が生じることもありますので、手術が必要かどうか、また効果とリスクについても主治医とよく検討する必要があります。

その他にも、日常生活でいびきをかきにくくする工夫をすることも必要です。のどの筋肉が弛緩しやすくなる飲酒を控えたり、気道を狭くする肥満の解消なども必要です。枕の高さを調整し、首に負担がかからないようにしたり、寝返りをし易くして側臥位(横向き)で寝られるようにすることも有効です。

良い睡眠は心身の疲労を回復させます。いびきや睡眠不足を解消し、気持ちよい朝の目覚めを取り戻しましょう。良い一年になりますように!


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